生命保険というと、死亡したときにもらうお金が出る「死亡保障」のイメージが強いです。しかし実際には、「死亡保障」の他に、生きるための保障もあります。その1つが「介護保障」です。
「介護保障」として、日本では平成12(2000)年に公的介護保険制度がスタートしたので、民間の介護保険への加入は不可欠ではありません。しかし、要介護認定を受けた場合、自己負担がゼロというわけではなく、利用料などにかかるお金があることは事実です。このような介護費用の自己負担のために用意するのが民間の介護保険です。
あなたにあった介護保険を選ぶためには、どんな保険であるかを知ることが大切です。このページでは、介護保険のしくみと選ぶポイントについて説明します。
介護保険は、介護状態になったとき、一時金や年金が受け取れる保険
介護保険とは、寝たきりや認知症により介護が必要な状態が一定の期間(180日など)継続したときに、一時金や年金が受け取れる保険です。保険料免除特約を付加すると、一時金もしくは年金を受け取ることになった場合、保険料が免除されます。
公的介護保険は、要介護認定を受けた利用者が1割の利用料を支払うことで介護サービスそのものが給付される「現物給付」ですが、民間の介護保険は「現金給付」です。
要介護状態に基本的な保障内容は、要介護状態になったときにもらえる介護保険金ですが、受取方法は3つのタイプがあります。
■一時金タイプ
所定の要介護状態になったときに、一時金が受け取れます。
メリットは、ベッドなどの介護用品の購入、住宅や浴槽・手すりなど付属設備の改修、転居、有料老人ホームへの入居など、高額な初期費用に備えることができることです。
デメリットは、初期費用が想定よりもかかった場合、日々の介護費用について公的年金や預貯金に頼らざる得なくなってしまうことです。
■年金タイプ
所定の要介護状態になったときに、毎年一定額の年金が受け取れます。
メリットは、終身保障であれば、所定の要介護状態に認定されている限り、年金を受け取ることができるので、介護費用について先々の心配をあまりしなくてすむことです。
デメリットは、所定の要介護状態になって間もなく死亡してしまった場合には、年金総額の受取額が一時金で受け取れたはずの額より少なくなってしまう可能性があることです。
■一時金&年金併用タイプ
所定の要介護状態になったときに、一時金と年金を併用して受け取れます。
一時金でベッドなどの介護用品の購入、住宅や浴槽・手すりなど付属設備の改修など初期費用に備えることができ、所定の要介護状態に認定されている限り、年金を受け取ることができます。
各保険会社によって異なる支給基準
支給基準は、各保険会社によって異なりますので、「ご契約のしおり-(定款)・約款」などで前もってしっかり確認する必要があります。
ここでは一般的な3つの支給基準を解説します。
公的介護保険連動型
公的介護保険で要介護認定(要介護3または4だけでなく、要介護1または2から対象になる場合もある)を受けると、それに連動して保険金が受け取れます。なお、要介護認定を受けるための申請をする際に保険金を請求すれば、30日後の認定時に速やかに保険金が受け取れます。
保険会社独自基準
所定の要介護状態に達し(要介護3または4が主流)、一定期間(「寝たきり」で90日または180日、「認知症」では90日など)継続したと、医師によって診断確定された場合に保険金を受け取れます。
「公的介護保険の要介護○に相当」と記載がある場合は、あくまでも目安です。要介護状態認定を受けても、必ずしも保険金が受け取れるわけではありません。つまり、ダブルスタンダードが適用されています。
「寝たきり」とは、常時寝たきり状態で、保険会社が判定基準としている項目に所定の数該当し、他人の介護を要する状態を指します。
「認知症」とは、器質性認知症と医師により診断確定され、意識障害(意識混濁・意識変容)のない状態において見当識障害があり、かつ、他人の介護を要する状態のことです。
公的介護保険連動型+保険会社独自基準
基本的には公的介護保険連動型です。65歳未満は公的介護保険の保障対象が限定されるので、保険会社独自基準で補完します。併用した基準の結果、保険金が受け取れます。
私は、公的介護保険の認定基準が日々変更されている点や不明確なダブルスタンダードを避けるために、3つ目の「公的介護保険連動型+保険会社独自基準」をお勧めします。
保険期間の設定は「終身保険」と「定期保険」
保険期間の設定には、一生涯保障の「終身保険」と一定の保険期間を定めた「定期保険」があります。
「終身保険」は、一生涯の保障です。死亡保障などと兼ねる形の場合は、保険料のかなりの部分が積み立てに回されています。途中で解約すると、まとまった解約返戻金を受け取ることができるため、一般的には「貯蓄性のある保険」と言われています。
その他、まとまったお金で支払う「一時払い」が可能な場合もあり、より高い貯蓄性にすることもできます。
たとえば、退職金などの手持ちの一時金の一部を、あらかじめ介護保険の一時払に充当することにより、その時点の預貯金や一部差し引いた退職金の残金を介護以外の理由で利用できるようになります。介護のために貯蓄するというよりは、介護に必要とされるお金を、最初に介護保険に預けてしまうことが、結果的には退職金など手持ちの一時金の有効活用になり、同時に老後のお金の心配を少しでも取り除くことにつながります。
払込期間の設定には、一定年齢または一定期間で終了(満了)する「有期払い」と、一生涯払い続ける「終身払い」があります。
「定期保険」は、一定期間の保障で、「更新型」と「全期型」があります。
「更新型」は、契約時から、10年など一定の期間は同じ保険金額・保険料です。保険期間が終わると、健康状態に関係なく原則として、それまでと同じ保障内容で継続することができます。更新時の年齢で保険料が決まるので、保険料は上がっていきます。
「全期型」は、65歳など契約時から保険期間の満了まで同じ保険金額・保険料です。「更新型」と同じ条件で保険料を比較すると、契約当初は高いですが、長く継続する場合は、払込期間までの総払込保険料は、「全期型」のほうが安くなることが多いです。
年金で受け取る場合、10年確定年金など「確定年金(定期)タイプ」と保険期間満了時までの受取期間とする「歳満了(逓減)タイプ」の2つのタイプがあります。
何事もなく保険期間が終わってしまったら、支払った保険料は1円も戻ってこないため、一般的には「掛け捨ての保険」です。
また、介護保険金を受け取ると、死亡保険金は支払われません。
これをイメージ図に表すと、以下のようになります。
介護保険のメリットとデメリット
メリットとしては、長期的な経済的リスクに備えることができる点です。なぜなら、いったん介護状態になると、介護費用の負担はいつまで続くのか終わりが見えないのが現状です。入院日数に関係なく、支給基準をクリアすれば、長期的に給付金を受け取ることができます。
また、在宅介護の場合、介護する家族が仕事をセーブすることにより世帯全体の収入が減少する可能性もありますので、介護保険の給付金を収入減に補填することも可能です。
デメリットとしては、医療保険やがん保険のように、1日目の入院から保障対象だったり、診断確定されたら一時金がすぐ受け取れるといった保障ではありません。たとえば、保険会社の独自基準で、一定期間が180日と設定されている場合、約6ヶ月間は何も保障がないという保険です。
公的介護の改正に連動して、介護保険の商品も変化
介護保険は、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が昭和60(1985)年に「認知症」のみを保障の対象として販売を開始しました。その後、支払いの対象となる要介護状態には「寝たきりと認知症の両方」が加わりました。
公的介護保険がスタートした平成12(2000)年前後から公的介護保険の要介護度に従って給付を行ったり、年金などが支払われる介護の基準を緩和したりするなど、各社の商品内容にはばらつきがあります。
また、介護保険を検討の際は、すでに加入している終身保険の保険料払込満了時に介護保障に切り替えられる特約や、要介護状態になったときに死亡保険金を前倒しで受ける特約がある保険を活用することもできます。つまり、単品の介護保険と比較検討することも重要なポイントです。
あなたにあった介護保険を選ぶためには、あなたの経済的リスクを考慮することが大切ですが、あなたの家族状況とも向き合うと、さらにムダ・ムラ・ムリのない保険加入をすることができます。
たとえば、独身の人や、お子様のいない夫婦などは、将来要介護状態になったときに、民間の介護サービスに委託することが予想されます。 公的介護保険の自己負担1割部分、利用限度額を超えるサービス費、利用対象外のサービス費などへの費用負担が大きくなるので、介護保険で備えておくことが大切です。
介護保険に加入するか迷っているあなたは、介護状態になったときに、自分の貯蓄で取り崩されてしまうのが困るかどうかを判断基準にしてください。
介護の経済的リスクを全て民間の介護保険で準備しようとするとかなりの保険料負担になりますが、公的介護保険ではカバーできない経済的リスクを民間の介護保険で用意することによって、今の生活レベルを極力下げない生活を維持することができます。
また、介護をしてくれる人への精神的・肉体的負担はかなりかかります。 要介護状態はすぐ解決するものではないということを認識し、お金で解決できるサービスがあれば気軽に利用できるよう、民間の介護保険をうまく取り入れて経済的リスクに備えることをお勧めします。