妊娠・出産・育児では、家族が増えることでの経済的リスクを軽減するため、国や自治体、社会保険制度からの公的制度があります。
主にもらえるお金として、健康保険に加入している人であれば「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」及び「出産手当金」、国・自治体から「児童手当」、雇用保険から「育児休業給付金」があります。
職業や収入、家族構成によってその額や支給期間は異なりますが、まずはすべての女性がもらえるお金について解説していきます。
「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」は、出産時にもらえるお金
健康保険に加入している人(本人および扶養家族)が出産した場合で、健康保険の種類に関係なく、「一児につき42万円(内16,000円は産科医療補償制度の掛金)」が支給されます。
支給要件としては、妊娠4ヵ月(85日)以上の出産に限られます。妊娠4ヵ月以上の出産であれば、死産、早産、流産(人口妊娠中絶も含む)いずれを問わず、出産育児一時金が支給されます。
また、双子などの多胎出産の場合は、人数分が支給されます。
ただし、平成21(2009)年10月から、加入している健康保険から産院などの医療機関等への直接支払いが原則となりりました。被保険者等が医療機関等の窓口で出産費用を支払う必要がなくなりましたので、直接42万円が口座に振り込まれることはほとんどありません。
分娩・入院費が支給額より安かった場合は、後日差額が指定口座に振り込まれます。
「児童手当」は中学校卒業時までもらえるお金
「児童手当」は、子育てする保護者に対して、一定の要件を満たしているときに、自治体から支給される手当のことです。ここでいう「児童」とは、18歳になって最初の3月31日までの子です。
実際支給対象になるのは、15歳になって最初の3月31日(中学校修了)までの国内に住所を有する児童で、毎年2月、6月及び10月に、それぞれ前月分までの分が支払われます。
ただし、申請し忘れたら、過去にさかのぼってもらえない点には気をつけなくてはいけません。子どもが生まれたら自動的に支給されるわけでなく、申請した翌月分からが支給の対象になります。
また、支給対象の間は、年に1回6月には児童の養育状況や前年の所得を確認するための現況届を提出する必要があります。
次に、働く女性が出産した場合にもらえるお金について解説していきます。
「出産育児一時金」に「+α」が受け取れる場合がある
「出産育児一時金」に「+α」が受け取れる場合もあります。「+α」とは勤務先の健康保険組合の付加給付や会社からのお祝い金のことです。
「出産手当金」は働く女性が出産日前42日、出産後56日分もらえるお金
「出産手当金」は働く女性が出産のため仕事を休んだ場合、出産の日以前6週間(42日)、多胎妊娠の場合は14週間(98日)から出産の日以後8週間(56日)までの間で、仕事を休んだ日数分の金額が健康保険から支給されます。
労働基準法で母体保護の観点から産前産後の休業期間が設けられていますが、「NO WORK NO PAY(ノーワーク・ノーペイ)」の原則に従い、給料が出ない会社がほとんどなので、その間の生活を支えるために健康保険から支給されます。
そのため、給料の全部又は一部が出る場合は、出産手当金は支給されない又は差額支給となります。
「育児休業給付金」は出産後57日目以降、原則子どもが1歳を迎えるまでの産休中にもらえるお金
「育児休業給付金」は、一定の要件を満たす働く女性の産前産後の休業期間後、1歳または1歳2か月(一定の場合は1歳6ヵ月)になるまで育児休業を取得した期間、雇用保険から支給されます。育児休業の取得を容易にするとともに、職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的としているため、給料が出ない会社がほとんどなので、その間の生活を支えるために雇用保険から支給されます。そのため、給料の全部又は一部が出る場合は、育児休業給付金は支給されない又は差額支給となります。支給期間は、産後休業を取得した場合、出産日と産後休業期間と育児休業期間を合わせて1年間となります。
以下、妊娠・出産・育児でもらえるお金について一覧表にまとめてました。全体像をつかむのに活用してください。
細かいですが、同一の子について配偶者が休業する場合の特例として、「パパ・ママ育休プラス制度」があります。育休は原則1回ですが、パパが例のように協力体制になると、さらにもらえるお金が増えることがあります。ぜひ、活用してください。
「乳幼児医療費助成」や「医療費控除」も忘れずに
すべての人がもらえるお金として「出産育児一時金」と「児童手当」について解説しましたが、実際現金としてもらえなくとも、子どもの医療費を補助してくれる「乳幼児医療費助成」、確定申告で払いすぎた税金が戻る「医療費控除」、など申請することによって無料になったり、返してもらえるお金についての公的制度もあります。
このように、家族が増えることによって必要な金額を算出する場合、収入見込額として、妊娠・出産・育児でもらえる国や自治体、社会保険制度からの公的制度を理解しておくことが重要です。
自営業の働く女性は、会社員の働く女性より公的制度が少ないですので、経済的リスクへの備えを手厚くする必要があります。
もらえるお金の知識を身につけておくと、適切な金額での教育費の備えにつながります。