保険加入の際に、多くの方の候補にあがるのが、「共済」です。監督官庁の監視の下に置かれている4大共済には、「JA共済」「全労済」「都道府県民共済」「CO・OP共済」があります。
「全労済」は、厚生労働省の認可を受けた、全国労働者共済生活協同組合連合会の共済です。主力商品の「こくみん共済」は、掛け金一律の定期タイプです。
あなたにあった保険を選ぶためには、主力商品の「こくみん共済」がどんな保障内容であるかを知っておく必要があります。なぜなら、この共済のしくみの問題点に早く気づいてもらいたいからです。あなたが60歳になって、この共済が待ち構えている問題に始めて気づいて、困る事態になってほしくありません。
このページでは、「全労済」の主力商品である「こくみん共済」を取り上げながら、しくみと問題点について説明します。
全労済は、労働者による相互扶助が根底にある
全労済は、生損保を兼営していて、マイカー共済、自賠責共済、住まいる共済などの取り扱いもあります。
昭和29(1954)年に大阪で火災共済事業が実施されたのが、事業のスタートといわれています。
その後、全国に広がり、昭和32(1957)年に労済運動の全国組織として、「全国労働者共済生活協同組合連合会」(労済連)が結成されました。現在では全国レベルの全労済本部を頂点として、地方段階の地方労済本部、県段階の県本部の3段階組織で構成されています。
設立当時は、労働者による相互扶助が目的でした。
現在加入するには、職場を経由するか、あるいは、出資金を支払って組合員になる必要があります。出資金は1口100円で、1年間で1,200円(月払100円×12回)を掛け金に上乗せして支払います。
解約時に、出資金は全額返金される仕組みです。
加入手続きは、近くの全労済の窓口、金融機関に置いてあるパンフレットや申込書を使って金融機関窓口でも受け付けています。また、商品によっては郵送やコンビニエンスストアでも加入することができます。
主力商品の「こくみん共済」は、年齢を重ねても掛け金はほぼそのままで、保障が減る
主力商品は、こくみん共済で、その他、新総合医療共済、新せいめい共済、引き受け緩和型の「いきいき応援」、ねんきん共済などがあります。主力商品のこくみん共済は、掛け金一律の定期タイプで、年齢や目的に合わせて25種類あります。
例えば、現役世代が最低限の保障を用意したいときの「総合タイプ」は、満15歳~満59歳の健康な人なら申し込みでき、月1,800円で死亡・障害・入院などの保障が「パッケージ型」になっています。
なお、年度末の決算で剰余が生じると、割戻金が受け取れるため、実質の掛け金負担は1,800円より安くなります。
59歳までは掛け金・保障内容ともに同じですが、60歳以降「シニア医療タイプ」に、70歳以降は「シニア総合移行タイプ」になります。掛け金は同じでも、保障内容が減るもしくはゼロになります。また、長くても保障は85歳で終わります。
参考までに「こくみん共済」のタイプ別保障内容を一覧表にまとめてみました。60歳以降は、掛け金はほぼ変わらないものの、保障内容がだんだん減っていることがわかります。
このように、全労済で一番身近な保険商品は、死亡・障害・入院などの保障がパッケージになっているので、「幕の内弁当」のようなものです。通信販売などで気軽に申し込むことができるため、加入者も多いですが、65歳以降は病気による入院の保障がなかったり、60歳以降は病気による死亡保障は100万円以下になっています。
このことに、60歳が到来したときに、気づいてほしくありません。60歳以降不足する保障額を新規で加入しようとしても、そのときの健康状態が問われるため、困難な可能性もあります。また、年齢が上がるにつれて、保険料もアップします。
「60歳以降、保障が減っていく」保険が通用するのは、20世紀の時代のことです。なぜなら、60歳以降の老後資金や医療費を自分で用意しなくても、退職金でやりくりしたり、年金や老人医療費の無料制度など、国が面倒をみてくれたからです。
21世紀に老後を迎えるあなたは、退職金と年金が期待できません。そして、老人医療費の自己負担が無料という時代は終わっています。
また、60歳以降も再雇用などで働く時代ですので、60歳過ぎても、毎月お給料を持ってくる大黒柱が万が一のことがあったら、残された家族は困ります。
これから、60歳を過ぎても、保険が必要な時代になりました。
これから加入を検討するあなたは、ある一定期間だけ保障する定期タイプという仕組みを理解し、民間の生命保険をベースに、補足する形で加入してください。しくみを理解しないで加入したあなたは、60歳以降、保障が減っていく「こくみん共済」の見直しをすることをお勧めします。