個人が個人年金保険の年金を受け取った場合には、契約者・受取人が誰であるかにより、所得税、贈与税のいずれか、もしくは両方の課税対象になります。
所得税の対象になる場合、住民税も課税の対象となり、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。
国税庁のHPでは、契約者でなく、保険料負担者が誰であるかにより、税金の種類を決めています。
このページでは、契約者=保険料負担者を前提にして、年金を受け取ったときにかかる税金について解説していきます。
所得税は、契約者=受取人の場合かかる税金
所得税が課税される契約形態は、契約者と受取人が同一の場合です。所得税法では、その性格によって所得を10種類に区分していますが、公的年金以外の雑所得として課税されます。
契約者と受取人が同一人の場合:雑所得
雑所得の金額は、その年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する払込保険料または掛金を差し引いた金額です。なお、年金を受け取る際には、原則として<(年金の額-その年金の額に対応する保険料または掛金の額)×10.21%>で計算した所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。
ただし、年金の年額からそれに対応する保険料または掛金の額を控除した残額が25万円未満の場合には、源泉徴収されません。
契約者と受取人が違う場合:贈与税+雑所得
贈与税が課税される契約形態は、契約者と受取人が異なる場合です。 契約者から受取人に対して、年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、年金受給権の評価額に対して贈与税が課税されます。
年金受給権の評価額は2010(平成22)年の税制改正により、優遇策が廃止され、原則的に時価評価になっていますので注意しましょう。毎年受け取る年金(公的年金等以外の年金)に係わる所得税については、年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法により計算します。
以下、年金受給権の評価額<相続税法第24条>の改正について、まとめてみました。
なお、2013(平成25)年から年金を受け取る際には、所得税は源泉徴収されません。
以下、契約形態で税金が変わることについて、表にまとめました。
夫婦間でも贈与契約をする
収入がない専業主婦が個人年金に加入する場合、夫の収入から保険料を支払うことになるため、「贈与税+雑所得」課税パターンの『契約者と受取人が違う』契約形態にしがちですが、保険料の原資を夫から妻への生前贈与により実行すると、「雑所得」課税パターンの『契約者と受取人が同一人』契約形態にすることができます。
手続きの方法は、年払保険料相当分をいったん妻の口座に振り込み、保険料はその妻の口座から引き落としするようにします。贈与税の基礎控除である110万円以下なら贈与税はかからず、贈与税の申告は不要ですが、夫婦間であっても、贈与の事実を明確に示すために、その都度、贈与契約書を作成することが大切です。
以下、贈与契約書の見本です。
老後の生活資金を非課税で受け取る方法
個人年金保険は、確実に老後の生活資金準備を目的とする代表的な商品の1つですが、年金を受け取った場合には雑所得となるため、一時所得のような特別控除(50万円)の適用や、さらにその金額の2分の1が非課税になる税の優遇策がありません。
このデメリットを挽回する節税方法としては、「低解約返戻金型終身保険<三大疾病保険料免除付>」を解約前提に加入して、一時所得パターンで受け取るようにすることです。 「三大疾病保険料免除特約」は、三大疾病であるがん・急性心筋梗塞・脳卒中により所定の状態になったとき、保険料を支払わなくてよいのと同時に、いざ、解約しても払込満了時まで保険料を払込みされたものとして解約返戻金を計算してくれる特約です。
一般的に、個人年金保険はこのような保障機能はありません。 保険料払込期間中の解約返戻率を70%に抑えることによって、払込期間が終了すると総払込保険料を上回る解約返戻率になり、100%を超えるケースが多く、この特性を活かして、老後の生活資金が必要な年齢に合わせて払込期間を設定します。
個人年金保険のように、年金を受け取り時期が決まっているわけではないので、加入時の設定とは関係なく、自分の必要な時期に解約して老後の生活資金を受け取ることが可能です。
ただし、一時金を受け取るということは、自分でお金を管理しなくてはいけないことを意味しますので、「お金の管理料」として税金を支払うという視点からみると、雑所得のように毎年税金がかかることがデメリットとはいえない場合もあります。
年金を受け取った場合は、所得税、贈与税のいずれか、もしくは両方の課税対象になり、税の優遇策も異なります。 税金のことを知らなかったばかりに、せっかく加入した生命保険の機能が十分発揮できなかったり、多額の税金を支払うなど損をしてしまうといったことがないように、加入時の契約形態の設定には十分注意することが大切です。
老後資金として「個人年金」と「低解約返戻金型終身保険<三大疾病保険料免除付>で用意する場合の違いを、イメージ図で表すと、以下のようになります。
年金を受け取った場合は、所得税、贈与税のいずれか、もしくは両方の課税対象になり、税の優遇策も異なります。
税金のことを知らなかったばかりに、せっかく加入した生命保険の機能が十分発揮できなかったり、多額の税金を支払うなど損をしてしまうといったことがないように、加入時の契約形態の設定には十分注意することが大切です。